がんばるせろな(仮)

夫のバルセロナ留学についてきた30代。コロナ禍のスペインをじたばた生きてます

2021年のスペインで、小泉八雲と邂逅した話

 先日、スペイン語の参考書が欲しくてグラシア通りの書店に行ってみた。そして、見つけてしまった。

 

 入ってすぐの平置きコーナーに、でかでかと「KOKORO」の金文字。夏目漱石の「こころ」がスペイン語で読める!と思って買ったのだけど、恥ずかしながら超勘違いだった。著者紹介ページまでたどり着いたところで気づいた。これは、ラフカディオ・ハーン先生のほうの「心」でした。夏目漱石作品の外国語訳はかねてから探していたけど、まさか小泉八雲の著作にバルセロナで出会うとは…。

 知り合う方々に「日本のことを教えて」と聞かれても表面的なことしか言えず、なんとなくワンピースやナルトや鬼滅の話をして終わる…というパターンに困っていたこともあり、帰国前に少しでも読めるようになろう!という目標を立てた。書かれているスペイン語をまるごと吸収して、人に話して身に着けられたら最高だなぁ…などと、皮算用が止まらない。

 海外で知り合いがいない環境だと、こんな間違いすらもすがるべき縁のように思えてしまうから面白い。

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 しかし、「日本」ジャンルの代表が、100年前の人が書いた本だったなんて。近時の日本について書いた本に需要がないのか、ラフカディオ・ハーンの考察を超えるものがないのか。傑作なのは間違いないのだろうけど、複雑な気分だし、とても気になる。

 語学学校にしろ、夫の留学先の人にしろ、日本についての知識はさほど持っていないか、知っていてもステレオタイプどまりの人が平均的だ。そして、そんな人たちはもちろん、少し日本のことを知っている人たちさえも、すでに知っていることよりも、私から生で聞く話を大切にしてくれる。なので、「今この場所では自分が日本代表」「彼らのなかで私の話はラフカディオ・ハーンの記述と同じくらいの重さで扱われるかも」という妙な責任感がある。となると、彼らの期待には誠実に応えたい(自分の帰属意識の濃淡はまた別の話なのでいったん置いておく)。

 

 けれど、何の手助けもなく、自国やその文化を客観視するのは難しい。長所も短所も、時には自分の価値観さえも、ほかの何かと比べることで浮かび上がってきたりする。だから、別の世界を知っている人の目線は貴重だ。そして、なるべく公平で客観的であろうとするなら、観察者の数は多い方が心強い。

 幸い、今の私は心がけ次第でそれができる立場にいるし、(勘違いが原因とはいえ)ラフカディオ・ハーンの「心」から100年ごしの洞察も借り受けることができる。偉大な先達の遺した日本へのまなざしを、自分が海外で紐解くなんて、稀有な経験だ。

 実は、「KOKORO」という言葉がタイトルにそのまま残っている理由も気になっている。heart,corazón,alma...そのどれでもない「こころ」ってなんのことだろう。ひょっとしたら、何か思いがけない発見があるかもしれない。

 そんなわけで、大げさかもしれないけれど、この先やるべきことのひとつが降ってきたような気がしている。

ギアチェンジする脳③怠けているのは脳か心か

 現時点で語学学校の授業は9時から13時まで。11時ごろに20分間の休憩があり、クラスメイトとのお喋りはその20分がメインだ。

 そして、昨日・今日と、この休憩で"英語で"おしゃべりすることを「めんどくせえ」と思う瞬間があり、自分のことながら興味深かったので記録しておく。

 

 直近2つの記事にも関連しているけど、理想は、スペイン語を聞いたらとっさにスペイン語で返せるようになること。そして、言いたいことが英語や日本語を介さずスペイン語で思い浮かぶようになることだ。それに向けて、少し意識を変えたり、英語を話す場面かどうかよく考えるようになったりしていた。

 そして、2時間ほどスペイン語漬けの授業のあと、英語でのおしゃべりに移行するのにエネルギーを使っていることに気が付いたのが昨日。言いたいことに英語がついてこないもどかしさはある。でも、それ以上に「これ英語でなんだっけ?スペイン語だったらこう言えるけど、それを訳すのじゃ変になるな」と考えている時間が結構あるのを自覚した。

 これまでは、水が低きに流れるがごとくスペイン語→英語に移行していた。英語じゃないと言えないことの方が圧倒的に多いけれど、今は「えいやっ」と何かの敷居をまたぐような気持ちにならないと英語すら出てこない。不十分ながらも、スペイン語でつっかえながら喋る方が気持ち的に楽な時もあるくらいだ。別に英語でつっかえたってわかるまで聞いてくれる人たちばかりなのに、予想外だ。

 もしスペイン語モードが育ってきて英語脳から独立しようとしているせいなら、それはうれしい。そして、「次はこの「えいやっ」がもう少し楽になればいいなと思う。もし脳が楽をしようとしているだけなのだったら、しっかり「今どの言葉を話したいのか」を意識し続ければ、また近いうちに何か変化がありそうな気もする。心のほうが怠けているのなら、今は少し気を緩めた方が今後辛くないと思うけど。

 ちなみに、書く方はまだ混線から脱出する糸口が見えない。

 

 

ギアチェンジする脳②混沌の果てにあるもの

 最近、英語とスペイン語(と、まれにカタルーニャ語)と日本語を織り交ぜて会話やテキストメッセージを交換することが増えた。そこで困るのが、英語とスペイン語の混線だ。英語で書いていたつもりが一部の単語だけスペイン語になってしまったり、逆にスペイン語で書いていたのに英語に変わっていたり。自分でコントロールできないほど混沌としていて、この先が心配だ。

 混沌といえば、思い浮かぶことは2つ。「荘子」の一節と、宇宙のことだ。中国の寓話では、「混沌」という存在が、秩序や知性を与えられることで個性を失い、存在としてある種の死を迎える。一方、今あるこの宇宙は、カオス的インフレーションからビッグバンに至り、地球や生命が誕生したという。だとすると、混沌の先には、沈静化と進化の2つの未来があるように思える。(秩序と大崩壊かもしれないが)。

 これに無理やりなぞらえるなら、常に日本語か英語という補助輪がついたスペイン語になるか、未知の何かが開花するか…。

 英語の補助輪付きという状況は、学生時代に一度経験している。おそらく、このまま何もしないでいると、また英語で考えてスペイン語に翻訳して話すか、スペイン語を英語に逐語訳するようにして理解するかになるだろう。同じ轍を踏まないために、今の状況と思っていることを記録しておく。

 

 語学学校に通い始めて5週間め。授業で教わってクラスメイトがみんな知っている表現なら、英語よりスペイン語を使う。全員が共有している知識だから、安心して言える。でも、細かい話をするには語彙も文法も足りない。だから、英語の中に知っているスペイン語を混ぜる形になったり、難しい話になると英語に切り替えたりする。そんなクレオール言語的な話し方が当たり前になってしまっている。

 私の中にある「これが言いたい」の正体は、英語モードの時とスペイン語モードの時は似ている。手近にある表現に頼ろうとするとき、それがどちらの言語かは一旦脇に置いてしまっていると思う。片方の言語でしか表現しえない概念もあると思うけれど、私はまだそのレベルには達していない。

 そして、アルファベットを書く=英語を書く、という認識が染みつきすぎている。これは…外国語といえば英語、という世界で生きてきたからだろう。スペイン語のつもりが、手癖でついつい英語になっているということが特に多い。言語どうしを似ていると迂闊に言えない…と書いたばかりだけど、英語とスペイン語で少しだけ違うスペルの単語があると顕著だ。座学だけでスペイン語は身につかないとはわかりつつ、英語にかけた時間が長い分、多少意識しなければ…と思う。

 

 何かを伝えたいと思う相手がいることも、その手段として2つないし3つの言語という選択肢があることも、悪いことではない。でも、そのやり方が通用するのは、相手も同じような言語レベルであるか、必死に理解しようとしてくれている場合だけだ。

 現段階では、コミュニケーションの手段として割り切れれば、クレオール的になってもやむを得ない面もあると思う。しかし、真摯に学ぶ場面とはきちんと切り分けなければいけないと、より強く思う。

 ほかのクラスメイトも似たようなことを考え始めたのか、意欲の高い子を中心に少しずつスペイン語で話そうという空気になってきている。授業中も、スペイン語で話そうというルールが強化された。カオス状態が、そろそろ終わりに向かっている。

 せっかくはじめからやり直しているのだ。学生時代の後悔を帳消しにできるのか、ここが勝負所!

 

canary-limon.hatenadiary.com

 

 

ギアチェンジする脳①スペイン語脳を育てたい

 英語を話すときは若干人格や発想が変わる自覚がある。

 たとえば、言語交換で「日本語の練習する相手を探していた」と言われたら"You can practice with me."とか"That's why I'm here."と返事をしたりするけど、日本人相手に「私と練習できます」「だから私がいるんですよ」とはあんまり言わない。英語の後に日本語でも同じ意味の文面を書いてほしい、というリクエストを受けることが時々あって、そのたびに困ってしまう。

 自分に違和感を覚えない言い方を選べるなら「私でよければお手伝いします」みたいな感じがいい。でも、英語やスペイン語でもこんな感じの態度で会話したいとは、今のところ思っていない。

 声の出し方も若干変わって、英語だと日本語で話すときよりも声が低くなるし、腹式呼吸っぽくなる。カラオケで「洋楽はちゃんと声がでてるのに、邦楽は…」と言われたことがあるくらいなので、顕著に違うはずだ。この理由については心当たりがなくもないので、いずれ言語化してみたい。

 スペイン語は、発音的には日本語に似ていると言われているけど、私としては英語寄りの発声のほうが楽だし、考え方も(言えることが少なすぎるせいもあって)英語の時みたいになりがちだ。だから、語学学校のクラスメイトと話すときに英語とスペイン語をまぜて話すことはよくある。

 この2つの言語を行き来することは割と楽にできるのに、日本人や日本語学習者を相手に日本語ー英語、日本語ースペイン語を行ったり来たりしながら話すとなると、すごく難しい。なので、今の私には①日本語モード②英語・スペイン語モード、の2つがある。

 何がきっかけでこのスイッチングが起きているのか。

 英語モードになるのは、日本語読みっぽくない英語を聞いた後が多い。「地元の方言でしゃべってよ」と標準語で言われても困るけど、地元の方言で話しかけられると頼まれずとも方言があふれてくる感じ。英語でこうなる時は、日本語で全文を考えて訳したりはしない。文法が明らかに変ではないか、途切れずに言えそうかというアウトラインだけを考えたら話し始めてしまう。それでも、一拍おいてしまうせいで会話についていけないし、言い始めたらやっぱりつっかえた!ということも日常茶飯事だけど…。

 スペイン語は…自分が言いたいことを考えるときは英語とだいたい同じ。言えないことがあると「英語なら言えそうなのにな」と思ってしまうので、英語モードの中に間借りしている感じがする。でも、ふいに話しかけられたときは、うっかり英語で返事をしてしまうか、スペイン語が出てくるまでに一度日本語で考えてしまう。発声もとても日本語っぽくなる。意識しなくても、何かのきっかけで勝手にスイッチが入る感じにはなればモードその③として独立したと言えるかな?

 将来的には3言語を平等に行き来できればいいなと思うけど、まずはスペイン脳を育てたい。いつまでも英語日本語で考えて翻訳して…ということをしていたくない。そのためにも、当面「今はこの言葉で話すんだ」と強く意識する習慣があったほうが良いような気がする。いつその枠を外すのか、それとも外さないのかは別として。

2文字の聞き取りに1カ月かかり、蘭学者のことを考えていたらカタルーニャ語の表現を教わった話

 バルセロナの公共交通機関のアナウンスは、カタルーニャ語から始まる。多言語の案内なら、最初がカタルーニャ語、2番目がスペイン語、3番目が英語だ。

 せっかくバルセロナにいるのだから、カタルーニャ語スペイン語を見比べ、聞き比べてみよう!と思いたち、よく使うという理由で地下鉄のアナウンスに耳を傾けていたが…地下鉄の路線名である「S1」や「L7」を聞き取るのに1カ月もかかった。

 

 たとえば「L7」は、カタルーニャ語で"Ela Set"と書くらしい。と、いきなり書いてしまうと3秒で済む話だし、スペイン語では"Ele Siete"だから「似てるなぁ。これならわかりそうなもんじゃないか」と思いもする。でも、最初に「エレ シエテ」だと思っているところに「エラ セット」と言われると、全然わからなかった。しかもアナウンスの冒頭1秒のことだから、集中して聞こう!と思った頃には終わっている。

 ”E,s,t"っていう音だけは聞こえるんだけどなぁ…という状態が1~2週間続いた。今思うと、結構惜しい。

 「あ、これカタルーニャ語のLと7って言ってるのかな」と気づいたのは、ほかの路線のアナウンスと聞き比べるようになったから。1週間くらい前に、L2の電車も乗り入れるホームにいたら、"E...dos"と聞こえた気がした。「2はスペイン語でもdosだから、最初の「E…」みたいなのはLのことかな?」と穴埋め方式で考えた。そこから、「E…」の正体を考えた。「E...が”L”の発音だとしたら、sとtは”7”の発音っぽいな。7はスペイン語ではsieteだから、似てるならつじつまはあってる。E...はエラって聞こえるけど、ラがはLAとRAどっちかな~。Lの音なんだからelaだと思うけど巻き舌って言われたらそんな気もするし…」というところで数日足踏みした。

 そして、たまたま親切なカタルーニャ人と知り合ったので「駅のアナウンスを聞きとれないまま1カ月たちそう。L7のことをela setかera setって言ってると思うんだけど」と聞いてみたのが昨日。「そうだよ、Lはelaだよ!」と教えてもらって、ついにアナウンス聞き取りの第一歩めが着地したのだった。やろうと思い立って1カ月、バルセロナにきてからは1カ月半近くかかった。

 最初だけは自分の中で候補を作って決め打ちしたくて、人に頼ったり調べたりするのはぎりぎりまで避けた。大変だったおかげで、「この言語とこの言語は似ている」と安易に言うものではないと実感したし、逆に「似ていると言われているならこんな感じかな」と連想に頼る加減も実体験できた。

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スペイン語ー日本語辞典のLと、カタルーニャ語スペイン語辞書のLの項目。
発音記号は載っていたけど、解説はいたってシンプル。

 たった2文字に1カ月(半)か…と嘆いていて、ふと思い出したのが「ターヘル=アナトミア(解体新書)」翻訳の話。オランダから来た友人に、オランダって日本史では存在感のある国なんだよ~なんて知ったかぶりを披露していたところだったので、蘭学のことを思い出したのかもしれない。

 どこで読んだか忘れてしまったけど、当時の蘭学者が「眉毛とは目の上に生えた毛のことだ」という文を訳すのに1日かかったという逸話があった気がする。1秒で読めてすぐ理解できる文に1日かかるというのは大変なことだ。少し調べただけだけど、ターヘルアナトミアの翻訳には3~4年の歳月を要したらしい。

 今の自分には、これがとてもよくわかる。単純そうな物事ほど難しい。疑問を持つ人や説明しようとする人が少ないから。スペインにきてから、そんなことの連続だ。自分の知識が少ないなら、難しさはさらに跳ね上がる。そんな中、よくあきらめなかったなぁと思う。眉毛の説明を訳せない状況から3~4年で医学書を翻訳し終えるなんて。自分が頑張ったところで、そんな結果にたどりつけるだろうか。

 などと再び嘆いていたら、件のカタルーニャ人がカタルーニャ語の良い表現を教えてくれた。字面がかわいらしいと思うので記録しておく。

 ーDe mica en mica s'omple la pica.

 直訳すると「シンクは少しずついっぱいになる」という意味らしい。大きな結果は小さな物事の積み重ねでできているってことだよ、と教えてもらった。

 私も毎日小さな疑問を持ち続けていけば、それが積もり積もって自分の中で大きな発見になるかもしれない。小さな発見を重ねていけば、大きな転機を呼び寄せるかもしれない。日本語でちりつもだよって言われてもあまり響かなかった気がするけど、今回は1カ月の苦労の果てに知ったこともあってか、うっかり感動して前向きなことを考えてしまった。

 ちなみに、「L7」のあとに聞こえる地名を「ela setが合ってた記念」と称してネットで調べたら、聞こえた通りで合っていた。私の脳内シンク、少しずつたまってると思いたい。

モンセラットでハイキングした記録

 バルセロナから電車で約1時間のところにある「モンセラット(Montserrat)」に、半日くらいのハイキングに行ってきた。日本語の情報が少なめだったので、自分の行動記録も残す。今回いったのはSANT JERONIという山頂っぽいところ。

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こんなかんじの、のこぎり状の崖上まで行ってきた

 自分が知りたかったことを全部書いたら4000字超の超大作になってしまった。でも、分割記事にするほどでもないので、まずは目次で概要を整理。

  • 電車はエスパーニャ広場からR5。Manresa(マンレサ)行き
  • 切符は種類が多いので、駅で買い方を聞く
  • 降車駅を間違えないよう注意
  • 山腹の町からハイキングスタート
  • コース概要と私の記録
  • 素人の感想と注意点
  • 使えそうな表現3セット(超簡単)

エスパーニャ広場駅からR5に乗る

 電車ならPl. Espanyaから出ている「R5」のManresa方面行きに乗るしかないので、これは簡単。電車自体が1時間に1本しかないのと、Pl.Catalunya駅と間違えないように注意するくらい。R5の改札前で切符を買える。

切符は、駅で買い方を聞く(超重要)

 モンセラットには最寄り駅が2つある。「ロープウェイで上りたい人用の駅(Aeri de Montserrat)」「登山電車で上りたい人用の駅(Monistrol de Montserrat)」だ。ここから、それぞれの手段でまずは中腹を目指す。なので、切符の種類が多くて、ややこしい。

 乗車券は、基本的には分けて買うよりも「乗車券+ロープウェイ」または「乗車券+登山電車」のセット切符を買う方がお得。自分で券売機を操作して買うこともできるけど、券売機の近くに駅の職員さんがいるので聞いたほうが確実。英語が通じたし、プラットフォームへの行き方や降車駅も、丁寧に教えてくれた。

 私たちが買ったのは、「モンセラット最寄り駅+中腹までのロープウェイ(往復)」券。2021年9月時点で1枚23ユーロ。帰りも使うので、なくさないように注意。

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 ※4人グループなら、乗車券だけは8回分を複数人で使いまわせる回数券(行き先がZONE4の駅なので、現在は1枚35ユーロ。ZONEとは…距離ごとに運賃が決まるので、その区分けのこと。バルセロナ市街地はすべてZONE1)を買って往復で使い切り、ロープウェイや登山電車は現地で別に買うよう勧められるかも。この場合、1人が改札をくぐって次の人に渡して…というリレーになる。たぶん、その方法も教えてもらえるはず。

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実際に乗った電車。おでこの電光掲示板が本当ににじんでいて見づらい

降車駅を間違えないよう注意

 バルセロナ市内から向かう場合、ケーブルカー用の駅に先に到着するので注意。電車の扉の上に路線案内があるのでよく見ておく。

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 これが車内の路線案内。この案内では進行方向は右から左で、通ってきた駅は赤、止まる予定の駅が緑色に光っている。二股になった先にロープウェイと登山電車の駅が並んでいる。

 周りの人の動きに合わせていたら違うところで降りてしまうかもしれないので、自分で確認して動くほうがいい。進行方向を向いて左側の車窓に「どうみてもあれだな~」という山が見えてきたら、降りる準備。

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どうみてもあれだ!と思って撮った写真

 Aeriは単線駅で、2つのプラットフォームが1つの線路を挟んでいる。私の行ったときは片側のホームはふさがれていて、帰りも来た時と同じホームを使うので少し戸惑った。電車の進行方向をよく確認して乗る。車体の「●●行き」ってところを見ればいいかな…と思っていると、見づらくて焦るかも。

ロープウェイで中腹へ

 Aeri駅を降りて山側を見ると、すぐにロープウェイ乗り場がある。まずは建物内に入り、チケットボックスで切符を見せ、ロープウェイ用のQRコードをもらう。このチケットも帰りに見せるので、最低限なくさないように注意。お手洗いも建物の中にある。

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 このチケットをもらったら外にでて、乗り場(写真右側の黄色いテープの奥)に向かうための列に並ぶ。ロープウェイは片道約5分。前側に乗れば、目の前ぎりぎりまで迫ってくる切り立った崖の迫力が抜群。後ろ側は、だんだん遠くかすんでいく景色を満喫できる。もう一つのロープウェイとの高速すれ違いも迫力があった。

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 ロープウェイの駅には水、コーヒー、お菓子の自販機(HARIBOのグミなど)があった。降車駅で水のペットボトルを買うと、ぎりぎりまで荷物を軽くしておける(スーパーで買っていったほうが安いとは思う)

山腹の町から、ハイキングスタート

 駅を出てすぐのスロープを上がると、そこは町だった。修道院をはじめ、博物館やお土産屋さんはもちろん、軽食が取れる場所や宿泊できる場所もある。アイスクリーム屋さんは、下山後のお楽しみに良さそうだった。

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奥側が山、手前側が修道院と崖。

 この町を出て山に入ってしまうと数時間は戻れないから、修道院見学を予定に入れるなら時間に注意。特に、ミサや有名な少年聖歌隊(スケジュール等は要事前確認)を見たいなら、その時間が最優先だ。あえて鐘のなる時間に山を登っていると、鐘の音が山肌に反響して何重にも聞こえて、祈りに包まれたような気持ちになれる。

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町の案内図。乗り物は12,13番に到着する。登山口は22番。

 地図の左側が山、右側が崖。山側に向かうと聖人と思われる銅像とタイルばりのかわいい手洗い場がある。その横の階段を上っていけば、ハイキングコースの入口。

 【超重要】ハイキングに行くなら、文明的なお手洗いはこの町が最後だと思ってよい。私が利用したときは床がびしょ濡れで、荷物置き場もなかった。仲間がいるなら、荷物は預けるのが吉。

ハイキングコース概要と私の記録

 こちらがモンセラットのハイキングマップ。下山後に息切れしながら撮ったので下の方が少し見切れているが、主要ルートの大半は見られるはず。

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 右下の方の、地図が擦り切れて白くなっているところが現在地。緑の吹き出しに書いてある”Vostè està aquí”は、カタルーニャ語で「あなたはここにいます」という意味。このほかにもみんな触るからか「現在地」が真っ白に擦り切れた案内図がいくつかあった。読めなくてもわかるのはありがたい。

 これによると、主なルートは赤太線の2つ

①Sant Jeroniへのルート:距離7km、所要時間2時間45分、標高差525m、レベルMitjana(平均的)

②La Trinitatを含む周回ルート:距離4km、所要時間1時間45分、標高差200m、レベルBaixa(低い)

 ※どちらも、往復か片道かはわからなかった

 運動全般に不慣れな私がコース①に挑み、山頂から同じコースを戻ってきた結果…所要時間は計4時間!上り2時間8分、約30分山頂でお昼休憩、下り1時間9分という内訳だ。この日は雨風はほぼなく、晴れ時々曇りのハイキング日和だった。気温は天気予報で23~28度くらい。休憩したり、追い越しやすれ違いで道を譲ったり、それを口実にまた休んだりしていたので、健脚な人ならもっと早いだろう。

 そして、たどり着いた山頂はこんな感じ。

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少し曇っているけど、雲が近く、雲の影がはっきり見られて楽しい場所だった

 小さな展望スペースがあり、周りのノコギリ状の山肌や遠くの町まで一気に見渡すことができる。見晴らしがよく、すれ違った女性に「しんどいけど登る価値は十分あるよ!」と励まされたが、ただの励ましではなく本当のことだった。

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 ここまでくれば、階段をはずれて、のこぎりの頂上をに自由に歩くのもいい。手すりはなくなるけれど、みんな好きなところで休憩したり、写真を撮ったり、寝たりしていた。近くののこぎりの上に電波塔があって通信環境があるので、SNSも更新できる。

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展望台から、来た道を振り返った写真。右に行けばのこぎりの上を歩ける

 山頂には遮るものがなく、常時涼しい風が吹きつけていた。この不思議な形の山がどんな風にさらされて今の形になったか、想像できる気がして楽しかった。ただ、この風のせいで汗が急激に乾くので、夏場でも羽織物は必須だ。

 運動不足の素人にはきつかったけど、その苦労は山頂のランチタイムでほぼ忘れた。そして、翌日の筋肉痛で思い出した。

素人の感想と注意点

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 これはスマホの履歴。12時頃にのぼりはじめ、14時過ぎに山頂に到着。見てのとおり、最初の1時間(前半)がとても急できつい前半はひたすら階段が続くうえに、どの段も大股じゃないとのぼりにくいサイズで、歩幅がキープできなかった。木々の生い茂った広場に出たあとの後半戦は、階段より坂道が多くなるので楽。

 行きは98%上り、2%下りという感じでしんどかったけど、帰りは全く休憩がいらなかった。急勾配すぎて走るように下る人が結構いたし、私も何度かそうした。

 全体を通して道幅は人1・5人分くらい。すれ違うために脇によけようとするとじゃりじゃりの岩肌しか足場がないことがあり、少し怖かった。

 もう一点、犬連れがとても多い。みんな賢いんだけど、基本リードがないのでフラッと足元にやってくることがある。私は2~3匹にボディチェックを受け、足が止まった。あとは、彼らの「落とし物」を見かけた時にもちょっとペースが乱れたり…。

 でも、運動不足ながらも非常にいい経験になったし、あの景色と達成感を味わえたなら、十二分に楽しいハイキングだったと思う。ほぼ垂直の岩肌にいどむロッククライマーからバイカー、修道院見学だけの人まで、いろんな人がいるのも、モンセラットならではかもしれない。

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使えそうな表現3セット(超簡単)

 せっかくなので、スペイン語で登山した気持ちになれる(そしてすぐ言える)表現3セット。カタルーニャ語で声をかけられることもあるけど、スペイン語で返事をしても通じる。下山するころには全部覚えているはず。

¡Hola! (オラ!)ーこんにちは。山の基本挨拶なのは、日本と一緒。

Gracias.(グラシアス)/De nada.(デ ナダ)ーありがとう。/どういたしまして。道を譲りあう際によく使った。

¡Pasa!(パサ!)ーどうぞ!行って!という感じ。山では道を譲りたいときに使える。ジェスチャーを付けると必ず伝わるし親切。パサパサ!と2回続けて言ったり、お願いしますという意味の"por favor(ポル ファボール)"をつけて、”Pasa, por favor."と丁寧に言ってもいい。パサパサ合戦になることが多く、ほほえましかった。

TIEの初回申請、当日の流れ

 スペイン長期滞在の難敵「TIE=Tarjeta de Identidad de Extranjero」。手続きの予約をとるのも大変だし、時間がかかるのでしんどい。私もドキドキしながら初回申請に行ってきたので、記録しておく。スペインでは一般的にTIEをNIEと呼ぶことが多いと聞いたけど、ここではIDカードのことはTIE、個人番号のことはNIEで統一する

 ちなみに、スペイン語はほぼわからない。そして私自身は学生ビザではなく「学生の配偶者ビザ」みたいなので入国している。この場合、ビザにNIEが書かれていないので、そのことを説明する必要があった。ちなみに、予約も準備も自分でしたので一層怖い。

 

 まずは準備編。大事なことは3つ

  • 自分のビザにNIEがない場合は、事前に調べる
  • empadronamiento以外に、住所がわかる書類を準備する
  • 行く警察署の外観はグーグルマップで見ておく

次に、当日の流れを時系列で。

  • 9:38  警察署着
  • 10:08 署内へ
  • 10:40 呼び出し
  • 10:57 終わり 

 私がCITA(予約)をとれたのは、Santa Coloma de Gramenetの警察署。L1の終点・Fondoが最寄り駅で、カタルーニャ広場からは約30分だ。

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9:38 警察署に到着

 日本の警察署や交番は独立した建物であることが多い。でも、ここの警察署は日本でいう商店街の中みたいなところにあった。看板も目立たない感じなので注意が必要だ。グーグルマップで入口の写真を見ていたのと、人の列ができていたのでわかった。

 入口で警察官にCITAの確認メールを見せると、名簿と照らし合わせた後、屋外の列で待つように言われた。20分前くらいなら入れてもらえるかも、と思ってこの時間に行ったけど、すでに私の前に2組並んでいた。

 見た限りでは、列は2種類。外国人用と、スペイン人用(の身分証明やパスポート関係)。なぜか担当の警察官が2人いて、それぞれ好きに並び直させるので大変そうだった。特にスペイン語がわかるスペイン人の列が…。

 警察官が建物の中にいて不在の時に「あなたが最後?」「なんの列?」と聞かれることがあったが、CITAの個人情報以外の部分を見せて乗り切った。

10:08 署内に入り、再び待機

 警察官が"¡Pasa!(入って)"と合図してくれたので、中へ。入ってすぐのところに番号札を出す機械があったけど、操作は警察官がしてくれた。

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 座る椅子を指定されるので、それに従う。椅子は横に3つ、縦に5列あった。コロナのせいで、原則的に各列1人しか座れないようテープが貼ってあった。グループで来ている人はテープの上から座ってたけど、要するに中で待てるのは5組まで。なので、この警察署では、早く来たから早く入れるというのは望み薄だ。

 椅子の正面にはテレビみたいな画面があり、呼び出し中の番号はそこに出る。写真を撮りたかったけど、稼働中の相談窓口まで写ってしまう構造だったのでやめた。

 ちなみに、番号札の最初のアルファベットで大まかな要件が分かれている。AはDNI(スペイン人の身分証明)、BとCはなくて、Dが外国人、Eがパスポート、Hが身分証の受け取り、LはおそらくDNI&パスポート。比率の問題か、誰が何の業務担当なのかが決まっているからか、Dで始まる番号は1人終わったらまた1人呼ばれて…という感じ。なので、中待合でも結構待った。

10:40 呼び出し、実際の手続き

 ようやく呼び出し。いろんな書類が必要だと言われていたので大事そうなものは一通り持って行ったけど、最終的に向こうの手元に残ったのはEX-17、TASAの支払い証明書&レシート、empadronamiento、パスポートのコピー(持参したコピーは使われなくて、その場でスキャンされた)、写真、あとはその場で提出する署名(これが券面に表示される)。

 保険の加入証明、アポスティーユつきの戸籍謄本やその翻訳、夫が出す予定の書類などは、コピーを持参したけど、ちょっと見ただけで返された。「本当に出さないでいいの?」と確認したけど、いらない感じのジェスチャーだった。多分、それは日本での話だとか、そんなことを言ってたと思うけど、自信はない。最後に渡された確認書には「下記のNIEを持っている人の配偶者である」旨書かれていたので、データ上の問題はなさそうだ。ただ、これらの書類が不要だとまでは思わない。

 持って行って命拾いしたと思ったものは2つ。

 ①私のNIEが書いてあるメールを印刷した紙これは、夫が事前に移民局(oficina de extranjería)に聞いてくれていた。学生ビザとは違い、配偶者ビザにはNIEが書かれていない。CITAをとるのに自分のNIEが必要だから、予約して警察にきている以上NIEは必ず知っている。でも、「ビザにNIEがないよ」って言われたらうまく説明できる自信がなかった。今回の担当者さんは見るなり「配偶者ビザね」と言ってくれたけど、一応「そうです、だからビザにNIEが書かれていませんが、移民局からのメールを持ってます」と説明したので話が早く進んだ。

 ②住所の記載がある住宅契約書。empadronamientoの住所のことでほかの職員さんと相談し始めたので少し困った。日本でいう何番地と何号みたいな部分がややこしかったか、データベースと書類の表記に齟齬があったかだと思う。なので、「住宅契約書も持ってます」と言って渡したら、解決したようだ。ただ、住所表記は最後まで「今から渡す書類ではこうなっているからね」という説明があり、なにか問題がないか心配ではある。

 ほかには、最初に「8月1日!」って言われて訳が分からなかったけど、これは今から申請するTIEの期限の確認だった。いきなり数字を言われると面食らう。

 指紋採取はさほど心配なかった。元から指紋が薄くて、アメリカ入国時に「指紋がうつらないから別室に行こう」と言われたことがあるので、かなりドキドキしていた。今回も苦労したけど、画面を一緒に見ながら「この部分がうつってない」「おでこの脂を指につけてもう一回」と細かく指示してくれたので助かった。両手の人差し指を3回ずつとった。

10:57 終わり

 手続き中はドキドキしっぱなしで、15分もかかったなんて思わなかった。10時の予約が1時間以内に終わったのだから御の字なんだけど、一番早い枠のCITAをとっていたら待ち時間がない分もっと早く終わったかもしれない。逆に、遅い時間のCITAだったら…もっと待っていた可能性もあるのかな?それとも、時間内に終わるように急いでくれたりするのだろうか。

 

 無事にいけば、引き取りは30日後。受け取りに来られる時間が午前と午後の1時間ずつしかないから、そこもちょっと大変かもしれない。うまくいっていますように。

 

 最後に、語学学校では習ってないけど知っておいてよかった表現

  • ¡Pasa! ー入って。自宅に誰か来た時に使える
  • ¡Mira!ー見て。ほら。画面や書類を見つつ説明を受けるので頻出